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さいきっく事件簿 ACT.4(前編)

― 1 ―


ゲームショップ『ゆ~ゆ。』

商店街の一角に構えられたこの店は以下の3人によって運営されている。

 ・伊藤 惣一(オーナー/店長)
 ・大平 奈々菜(アルバイト店員)
 ・青野 一成(アルバイト店員)

大平奈々菜はこの店でアルバイトを始めて3年は経つ。
オーナーの伊藤の不在時には、彼女が店長代理として店を切り盛りしている。

上記3人でローテーションを組み、繁忙期を除くと店には2人しかいない事が多い。

本日の勤務当番は、伊藤惣一と大平奈々菜。
明日は、とある新作ゲームの発売日だ。
雑誌等でも大々的に取り上げられ、期待の新作ランキングでも常に上位の座を保つ「馬鹿売れ間違いナシ」の商品だ。

剣と魔法のファンタジー世界を舞台にした、ラブコメアドベンチャーRPG。プレイヤーは数人用意された女の子キャラクターと共に冒険を楽しみ、親密になっていく。
手っ取り早く言えばギャルゲーだ。


2人は明日の発売日に向けて着々を準備を進めていた。
その合間にぽつぽつやって来る客を応対し、元の作業に戻る。
店が暇なのは喜ばしくないが、そのお陰で作業の進捗が早い。


奈々菜は、明日店頭に並べる新作ソフト及び、予約特典の在庫の最終確認。

一方惣一は、店内のポスターを貼り替え、店の表に出してあるキャラクターの等身大POPに「明日発売!!」と書かれたシールを貼る。

「しっかし、ゲームの中の女の子ってのは色っぽい格好してんなぁ。」

惣一は、にへっと薄ら笑いを浮かべながら、目の前に立つ動かぬ美少女をしげしげと見つめていた。



「店長!そんな所の鼻の下伸ばしてないで、これ運ぶの手伝って下さいよぉ!」

「お…おう!」






― 2 ―


午後8時、閉店。
店内のポスターを初めとする販促品のレイアウト、商品陳列は明日に向けてバッチリと整えられていた。
あとは、外のPOPを店内に片付けるべく、奈々菜が半分閉まっているシャッターをくぐって外に出る。

「あれ?」

辺りをキョロキョロと見まわしてから、店内の惣一に向かって声を上げる。

「店長ー!POP知りません?」

「そこにあるだろ。そこに…」

身を屈めて奈々菜の隣にやって来た惣一は、言葉を最後まで発する事無く、その場に硬直してしまった。



無い。



「あは~、もしかして盗まれちゃいましたかね?」

場の空気を和まそうと、無理矢理引きつった笑みを作った奈々菜の額には、大きな冷や汗が湧き出ていた。



「大平、お前は明日休みだったよな?」

「はい。明日は店長と青野君のハズですけど…」

「せっかくの休みを潰すことになって申し訳ないんだが…明日、いつもより1時間早く出勤できないか?」

「え?大丈夫ですけど…どうするんです?」

「詳しくは明日話すよ。じゃ、8時半に頼むよ。」

「はぁ…分かりました。」

奈々菜は惣一の意図が読めず、キョトンとしていた。








― 3 ―


翌朝。午前8時30分。

「ええ~!これを私が着るんですかぁ~!?」

奈々菜が惣一から手渡されたもの。
それは新作ゲームのメインヒロインのコスプレ衣装だった。

「まぁ…頼むよ。次の給料弾むからさ。」

「それより店長、こんなものなんで持ってるですか!?」

「……」

惣一は何も言えなかった。


「まま、それは良いとして」

「良くないですっ!」

「頼むよ、ほれっ、この通り!」

「……んもぉ~…」

惣一がオーナーだとは言え、奈々菜も長い間この店で働いている。
店長代理まで任されるようになって、店に愛着さえ沸いている。
『ゆ~ゆ。』は惣一の店であるが、自分の店であると思う事もある。

「はぁ…わかりましたぁ」

ようやく諦めがついたのか、奈々菜は自分が愛する店舗の為、人肌脱ごうと決心した。
店の奥で、惣一から渡された衣装に着替える。

上は、肩は丸出し、胸の谷間を惜しげもなく晒しだすような作りになっている。オマケにヘソ出しだ。
下は、ミニスカートに足首までしかないショートブーツ。太腿に用途不明の青い輪っかを着用している。

「おお!似合ってるじゃないか大平ぁ!」

「あの…そんなに見られると恥ずかしいんですけど」

露出部を隠すよう、もじもじとした仕草で口を尖らせる。

「後は髪だな。それ、とってくれないか?」

頭の上にちょこんと乗った2つのボンボンを取り去ると、毛先が肩まで降りてくる。

「そっくりじゃないか、可愛いねぇ、大平さん。」

「冷やかさないで下さい!」

赤面する奈々菜に、惣一は冗談っぽい口調で言ったのだが、冷やかしではなかった。
同じ服装、同じ髪型をさせてみて惣一は彼女と、ゲームのヒロインが瓜二つである事に初めて気が付いた。


一方、赤面しっぱなしの奈々菜も相手は2次元と言えど、美少女と似ていると言われ、まんざらでもない様子だった。

「よしよし、これで問題は解決だ!頼んだぞ、大平!」

腰に手を当て、一件落着とばかりに高笑いする惣一を目に、奈々菜の胸に怒りの炎がくすぶり出したのだった。


紹介が遅れたが現在、店長にコスプレをさせられ、
湧き出した怒りでわなわなと震えている彼女の名前は大平 奈々菜(おおひら ななな)。

自分の身体の厚みを変更できる「超能力者」である。
到底人が通り抜けられない狭い隙間でも、身体を薄く、平べったくしてしまえば難なく通過出きる便利な能力は、倉田和泉の縮小能力と同じく潜入活動に向いている。
奈々菜は『ゆ~ゆ。』に勤めて3年になるが、惣一とはもっと古くからの知り合いだった。

もちろん2人が初めて会った場所は、彼らと契約し、彼らを管理する「会社」である。



それはさておき、惣一と奈々菜のやりとりが始まって早一時間。
時刻は間もなく午前9時30分となる。
開店時刻の30分前には出勤するのが原則であるこの店に、もう1人のアルバイト店員がやって来る。

ガチャッと店の裏口が開けられる音と共に「おはようございま~す!」と元気の良い挨拶が聞こえて来た。

「わっ!?青野君が来ましたよ!」

「とにかくお前は、そこの壁に立てかけられてるフリしとけ。厚み2センチのPOPが地面に垂直に立ってたらおかしいからな。」

言われた通り、壁に寄り掛かって身体を硬直させる。

「あの、店長。この姿勢結構辛いんですけど…」

「だ~!黙ってろ!」

直後、青野一成が壁からひょいっと顔を出す。

「あれ、店長1人っすか?誰かと話してませんでした?」

「ああ、今プロモ映像の再生チェックしてたからな、それの音声だろ。」

一成は「そっすか」と納得すると、壁にもたれ掛かってる奈々菜に目をやる。
視線を感じ、わずかに身体をびくつかせた奈々菜だが、一成は気付いてない様子だった。






― 4 ―

「じゃあ俺、そろそろシャッター開けてそこのPOPを表に出しておきますね。」

一成は店長の指示を待たずして、開店準備を始めた。

「ああ、そのPOPにこれ貼っておいてくれ。」

惣一から『本日発売!!』と書かれたシールを受け取った一成は、ためらう事なくPOPのヘソの上にベッタリとそれを貼った。

「あ…」

「ん、何すか?」

「い…いや、何でもない。」

(絶対怒ってるよな、大平の奴…)

「この女の子、なんかナナナさんに似てるっすねぇ?」

「ああ、大平も結構可愛い顔してるからな。」

じっとPOPの顔を覗き込んでいる一成の目を、何とか他の部分に向かせようと惣一は言葉を続ける。

「それはそうと、とっとと店の表に置いて来いよ。」

「はいはいっと。あれ?」

「ああ~~!!」

「な、何なんすか、さっきから!?」

「い…いや、何でもない、何でもないんだ。」

POPを運ぼうと、一成が手を掛けた部分。左腕を胸の前に回し、そして右手は「彼女」の股の下に入れられていた。

「何かこのPOP、手触りがいいっすねぇ。」

「いいからとっとと運べよ!」

「はいはいっと。何を怒ってるんだか…」


(俺、殺されるかもしれん…)

一成に運ばれていくPOPから発せられる尋常では無い強さの殺気を感知した惣一は死を覚悟した。





予想通り、新作ソフト『ももんじゃ☆』は飛ぶように売れた。
雑誌やテレビで宣伝されているとは言え、この作品の事を知らない客も少なくはない。
店頭に置かれたチャーミングなPOPに目を引かれ、初めて『ももんじゃ☆』の存在を知る客達。
中にはそのPOPの顔や舐めまわすように鑑賞するものもいたが、やがて店内に入ってくると
「あの店の前に飾ってある女の子のゲーム下さい」と『ももんじゃ☆』を購入していく。

奈々菜のPOP作戦は大成功だ。



客足も落ち着き始めた正午。
そろそろ昼食を取る時間なのだが、その前に本日のMVPを少し休ませてやらねばなるまい。

「おーい、青野。ちょっと表のPOPを店内に入れてくれないか。」

「え~、今オレ手が離せないんで店長がやって下さいよ。」

「え……いや、いいから取って来い!」

(俺が行くと気まずいじゃないか、色んな意味で。)

POPの正体に気付いてない青野だからこそ、任せられる事もある。
作業の手を止めぶつくさ言いながら、一成は店の外へと出て行った。


「あれ?」

店の前に出た一成は辺りをキョロキョロと見まわしてから、店内の惣一に向かって声を上げる。

「店長ー!POP無いっすよ~?」

「おいおい、あるだろ。そこに…」

一成の隣にやって来た惣一は、言葉を最後まで発する事無く、その場に硬直してしまった。



無い。



「盗まれちゃったんすかねぇ?なかなか萌えるPOPでしたし。」


「なんだと~~~~~~~!!??」


惣一の絶叫が、商店街にこだました。
それは奈々菜よりも、後の自分の身の安否を気にしてのものかも知れない。


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