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さいきっく事件簿 ACT.3

― 1 ―


「以上が今回の依頼内容だ。」

「わかりました。ちょっと恥ずかしいですが…お仕事ですもんね。」

「君の能力が必要なんだ。期待させてもらうよ。」

「はい!」

シルキィはにっこりと微笑んで上司に返事をした。








「ふぅ。明日から3日間…固まってないといけないのかぁ…」

長く伸ばされたブロンドの髪をまとめ、シャワーを喉元に当てながら、シルキィは溜息をついた。
彼女の身体はもう充分に成熟していながらも、若者独特の肌の張りを兼ね備えている。
小さすぎず、大きすぎず、美しく整った自身の胸に目をやる。
過去に何度かグラビアモデルの仕事経験を持つシルキィは、人前で肌を露出するのはある程度慣れている。
それでも、自分の裸体を人前に晒すのには少なからず抵抗はある。

「さて、お手入れしとかなきゃね。」

カミソリを手に、ムダ毛の処理に専念した。
普段からエステサロンにて脱毛処理を受けているのだが、念には念を入れる。
脚、そして脇と彼女の作業もあらかた終わったに思えたが…

「あとは、ここだけね。」

最後に彼女はエステを受けていない部分、即ち秘部へと手を伸ばすのだった。










― 2 ―


「助かりましたよ。どうしても会場に殺風景な部分がありましてね。何か彫刻を配置したかったんですが、一時のパーティの為に大金をはたいて購入するのも考え物ですしね。まさか御社のような、彫刻の貸出をしてくれる企業様が存在するとは思いませんでした。」

「お話は伺っております。また3日後に回収に参りますので、それまでは大切に扱って頂きたい。
とは言え、今回ご用意致しましたのは少々の事では傷付かない造りにはなっていますがね。」

「素材は水晶だと聞いてますが…石英にそれほど強度は無いのでは?」

「仰る通り、本来であれば水晶は脆い物質です。企業秘密ではあるのですが…弊社の技術によるものですよ。」

「へえ!それは凄いですね。早速ですが、物を拝見してもよろしいでしょうか?」

「勿論です。…おい。」

男が声を挙げると、後ろのバンで待機していた運転手と、荷物を支えていた男が2人掛かりで大きな箱を持ってくる。
会話をしていた2人の間にそっと置かれた、まるで棺桶のような形をした箱の中には、布で包まれた人型の物体が入っている。
それを覆っていた布が取り除かれ、女性を象った彫刻が姿を現した。

腰にまで届きそうなくらい長く、少しクセのある後髪。
両脚は閉じられ、その長さを強調するようにまっすぐと揃えられている。
両腕は形の良い乳房を隠すように胸の前で交差し、人間であれば絶世の美女であろうその顔はすました無表情で、目は閉じられている。
閉じられた目には、まつ毛まで繊細に再現されており、それだけでかなりの値がついている芸術品だとわかる。

「これは素晴らしい…!正直なところ、レンタル料が少々高いかなとは思っていたのですが、これ程の物でしたら納得出来ますよ!」

「恐れ入ります。それでは、確かに商品をお預け致しましたので、私共はこれで…」

「はい、ありがとうございます!」

男は帰り際、客に気付かれない様、彫刻の耳元に「頼んだぞ」とそっと囁いた。










― 3 ―


業界のお偉方は集まるパーティーは二夜連続で行われた。
舞台演出や、料理に出席者達が皆満足気な顔をして帰って行く姿が、山科にイベントコーディネイターとしての誇りを持たせる。

「さすがだな、良くやったぞ山科。」

「ありがとうございます、課長。」

「しかしあの立派な彫刻、良く手配出来たな。お客達にも好評だったぞ。」

「ええ、偶然あの彫刻を貸してくれる企業を見つけましてね。
 おかげで経費が少し予算オーバーしちゃいましたけど。」

「結果オーライだ。少々の事なら多めに見よう。」

「ありがとうございます。それじゃ片付けは担当に任せて、僕は一足先に失礼しますね。」

山科はパーティ会場の壁際に向かう。
観葉植物に囲まれ、静かに佇んでいる水晶像を抱きかかえた。

「持って帰るのか?」

「ええ、レンタルの契約は明日までですしね。業者がうちまで回収に来る予定なんですよ。」

「そうか、車まで手伝おう。」

「あ、すみません。じゃあ足を持ってもらえますか?」





ゴトッ…

「ふぅ~あっちぃ~」

山科が住んでいるワンルームの賃貸マンション。
自室に水晶像を搬入し終えた山科は、クーラーもスイッチを入れ、スーツを脱ぎ捨てる。

Tシャツに短パンと、楽な格好に着替え、ナイロン袋の中から缶ビールと刺身の盛り合わせを取り出し、ドカッと床に尻を着く。
ここ数日のハードスケジュールをこなした自分へのご褒美として、帰路の途中スーパーで買って来たのだ。


プシュ…


「っはあ~!仕事が上手く行った後のビールは格別だあ!
 ちょっと高く付いたけど、これ、レンタルして正解だったよ。」

部屋の片隅に立てた水晶像を鑑賞しつつ、プライベートタイムを満喫する。


「しかし、見る度にそそられるものがあるよなぁ、これ。」

部屋の蛍光灯の光を浴びて輝きを放つ水晶像。
確かに彫刻には裸婦像が多い。けれども所詮は石。人間の女ではないのだ。そんな当たり前の事は解っている。
しかし、山科の前に立っている彫刻は、彼が今までに見てきた物とは何かが違うように感じた。

他の彫刻に比べ、ずっと精巧に作られている、というのも原因の1つだろうが、それ以外にも言葉では説明出来ない感覚的なもの…。

じっと見つめるうち、山科は物を言わず立ち続けているだけの彼女に欲を感じていた。

立ち上がり、像の頬をそっと撫でてみる。
人間の女とは違う感触。
硬く、そして冷たい。
それでいて、つるつるとした水晶独特の手触りが心地よい。


「何を考えてるんだ、僕は。相手はただの石コロじゃないか。」

欲求と理性がぶつかる。
山科は彼女の方に手を置き、少し下からそのすました顔を見つめていた。



…ごくっ。


生唾を飲み込む。


次の瞬間、葛藤に決着がついたのか、山科は水晶像を抱き上げ、そっと食卓の上に寝かせた。

キッチンに干されている布巾を水で濡らし、彼女の全身を拭いてやる。
冷凍庫から氷を取り出し、胸の谷間、ヘソの上、そして閉じられた太股の間…と数箇所に設置していく。

やがて氷は溶け出し、雫となってツツ…と彼女の側面を流れ落ちる。

その様子を固唾を飲んで見守る山科。彼が初めて感じた良くわからない興奮に、彼自身少々混乱しているのかも知れない。

体温を持たない彼女が、氷によってさらに冷たくなった事を、指や頬、そして舌を使って確認すると、今度は買ってきた刺身をその上に盛り始めた。


「女体盛りってのは聞いた事あるけど…彫刻盛りなんてものをしたのは世界中探してもいないだろうな…」

自らの行いを心の中で馬鹿にしながらも、彼はもくもくと食事を続けるのだった。













― 4 ―


山科はシャワーを浴びていた。
食卓の上に放置された1体の水晶製の彫刻は、そのタイミングを見計らい、一旦演技を中断する事にする。
無色透明であった彼女の身体が、頭から足先に向かって、スーッと肌色に変わって行く。
閉じられていた目が開かれた。

「きゃあ!つめた~い!身体がベトベトするぅ!」

正体を現した彫刻は、ついさっきまで上げたくても上げられなかった悲鳴を、時間差で上げる事が出来た。


シルキィ=ブランフォード。24歳。
自身の身体を、今回のように水晶や石、宝石、鉱物等に変化させる事が出来る超能力者である。
肉体変化中も彼女の意識は持続されており、また五感もしっかりと生きている。

故に、手荒い扱いを受けても彼女はじっと痛みを堪えるしかない。

また都合の良い事に、何かしらの固体に変身中の際、目を閉じていてもしっかりと外の様子を視覚で捕らえる事が出来るのも、一応超能力の一つか。

山科の顔が急接近してきた時は、彼女が水晶でなければすぐにでも顔を反らせたい心境だったであろう。


身体にまとわりつく不快感により、少々パニックに陥っていたシルキィが落ち着くと、今度は先程山科から受けた仕打ちを思い出す。

「でも…まさかあんな事されちゃうなんて…」

両頬に手を当て、シルキィの顔はかああ…っと赤面する。


「で…でも、明日になれば、今日のお仕事も終わりなんだし、頑張らなきゃね!うん!」

自らに気合を入れる為、声を出し、胸の前で拳を作る。


「あれ?僕テレビつけてたっけ?」

シルキィの大きな独り言はバスルームにまで届いたらしい。
自室から聞こえた女性の声に反応した山科が、シャワーを止めた。


(わわっ!!)


バスルームのドアが開けられ、トランクス1枚しか身に付けていない山科が、頭をタオルで擦りながら出てくる。
しかし変わった所は見受けられない。誰かが侵入した形式もなければ、テレビもついていない。


「ふむ、気のせいかな…?」


何事も無かったかのように、食卓の上に寝そべっている水晶像は、心の中でほっと安堵の息を吐き出した。


(危なかったぁ~!)











― 5 ―

夏場、山科には就寝の際、パンツ1枚でベッドに入る習慣がある。
エアコンが効いた室内で裸で眠るのだから。当然それが原因で夏風邪をひいてしまった経験もある。
しかし、それに懲りない彼は未だその習慣を続けていた。


今日は特に……裸で眠りたかった。


「ピュグマリオンって言葉は聞いた事はあるけど…」


最初は戸惑ったものの、彼は新しい自分の発見を受け入れた。


刺身により、少々生臭くなっている水晶像をもう1度拭きあげ、ベッドの中へと運ぶ。
一緒に布団を被り、彼女に抱きつく。
両腕、両脚を像の後ろに回し、直立不動の彼女に絡みつく形になる。


つるつるした材質、そしてひんやりとした感覚が気持ち良い。

山科は硬い抱き枕を抱擁しながら、一晩限りの幸せを満喫したのだった。











― 6 ―


「わ!結構入ってる!」

パーティー会場での飾りになると言う仕事を、予想外のトラブルがあったものの無事にこなしたシルキィは、早速銀行口座の残高を確認する。
しばらくの間の生活費、そして新しい洋服代として10万円をATMから引き出す。

楽しみを隠し切れず、笑みを浮かべながらデパートへと向かうシルキィ。
浮かれ過ぎていて気付かなかった。
途中、山科とすれ違った事に。




山科は立ち止まり、しばらくの間驚愕の表情でシルキィの後姿を目で追っていた。
やがて、何かに納得したように「ふぅ」と息を漏らし、再び歩き出すのだった。


「『彼女』と同じ顔をした人間なんて…興味ないよ…。」



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