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さいきっく事件簿 ACT.5-1

― 1 ―



桜井 正太郎。19歳。
彼もまた、特殊な能力の持ち主だが例の会社には属していない。
もちろん「あの会社」の者がしょっちゅうコンタクトを取って来るのだが、その都度断り、半ば強引とも言えるその勧誘をやり過ごしていた。

組織なんて言う窮屈な場に身を寄せるよりも好き勝手に、自由奔放に生きていたい。
それに、お金の面でもあの会社よりも美味しい仕事がある。







街の喧騒が遠く聞こえる入り組んだ路地裏。
時刻はまもなく午後7時を迎える。

キャップを目深に被った正太郎は迷うこと無く、暗い細道を進んでいた。

隙間も無いほどびっしりと建てられたビル郡の裏口が並んでいる。
その中の1つのドアをノックもせずに開き、中に入る。

「あら、早かったじゃない。」

部屋の中にいた女性が正太郎の方を向いた。
女性の髪の毛、瞳は共に金色。
脚の露出が高い、赤いチャイナドレスを着込んだ女性はその豊満さを強調するように胸の下で腕を組んでいる。
妖艶な雰囲気を持つかなりの美人だ。


「今日も協力してくれるのかしら?」

「そのつもりで来た。今日は幾らくれる?」

「あら、今までの額では不満なのかしら?」

正太郎は頷いた。

「誰のお陰で儲かってると思ってるんだい?」

「……。そう言われては、何も言い返せないわね。」

「4割。」

「…分かったわ。その代わりしっかり儲けてね。」

「もちろん。じゃあ行くよ。」


シュンッと瞬間的に正太郎の身体が縮むようにして消えた。
支えを失った彼の衣類がパサリと床に落ちた。

女は見慣れた非現実的な光景に驚く事も無く、床に残された正太郎の衣類を見つめていた。


すぐにズボンの裾が小さく動き、そこから転がり出てきたもの―


サイコロだった。

「ふふ、お見事。」

自力で足元まで転がって来たサイコロを摘み上げ、満足気な笑みを浮かべた。

「じゃあ、バレないように…」

「わかってるよ。」

女は「お願いね」と、物言うサイコロに軽く唇を当てた。










「ちょっと美樹ちゃん。」

「あ、オーナー。おはようございます。」

「おはよう。」

時刻は午後7時を過ぎているが、時間を問わず挨拶は「おはよう」とする業界は少なくない。

店員達は8時の開店に向けて、急がしそうに動き回っている。
店内では、男性スタッフがチップやトランプの配置等、各ゲームのセッティングを行い、比較的入って間もない者はモップ掛けをしている。
バースペースでは、カウンター内でグラスを丹念に拭いている者もいる。

その時の美樹は更衣室にいた。
腰まで届く濃い紫色のストレートヘアーに同色のぱっちりとした瞳。
バニーガールの衣装を着込み、あとは耳を付けるだけ…という時にオーナーに声を掛けられた。

「あ、サイコロですか?」

「ええ、今日もこれを使ってちょうだい。」

美樹に1つのサイコロが手渡される。

「前々から疑問に思ってたんですけど…」

「なぜ、このサイコロしか使わないか、ね?」

「はい。」

「そうねぇ、いわく付き…と言うか、ありがたい代物なのよ。」

「はあ…。」

「実際このサイコロを使ってから、美樹ちゃん負けた事ないでしょ?」

「あ…そう言えばそうですね。」

「でしょ?幸運のサイコロとでも言っとこうかしら。
 それじゃ、閉店後またいつものように私まで返しに来てね。」

そう言うとオーナーは更衣室を出て行った。

「幸運のサイコロかあ…」

美樹は耳を付け終わり、預かったサイコロを手に店内の自分の持ち場へと向かった。









― 2 ―


「なぁ和泉、なんか分かった?」

隣に座っている茜が声を潜めて聞いてきた。

「ううん、全然。」

このカジノに入店してもう1時間くらい経つだろうか。
1つのサイコロの出目を当てるだけの単純なゲームなのにさっぱり勝てない。
『偶数』に賭けると『奇数』が出るし、『6』に賭けると『6』が出る事はまず無い。

「奇数に30!で、1にも30!」

茜が張り切って声を上げている。

バニーガールがそっとサイコロを振る。
出た目は『6』だった。

「うがぁ~!」

茜が頭を抱えて悶絶している。
これで50万は負けただろうか。

イカサマ調査の為、あらかじめ「会社」から予算としてお金を預かってはいるけど、既に半分スってしまった事になる。

「ちょっとそのサイコロを見せて下さい!」

私は台の上で静止したサイコロを、店員よりも先に手にとって観察してみた。
茜が横から覗いている。

うーん、見た目はどこもおかしいところは無いただのサイコロなんだけど。
ポケットから小型の金属探知機を取り出し、テーブルの下でバニーのコからは見えないように、こっそりとサイコロに当ててみたけど何も反応が無かった。
ここまで見事に負けると単に運の問題ではなく、何らかの細工が施されているのは間違いない。でも、タネが全くわからない。

「あのぉ…」

バニーガールがおどおどしながら声を掛けてきた。
サイコロを返して欲しいと言いたいのだろう。

「ああ、ごめんなさい。」

彼女にサイコロを返したその時、

「お客様、如何なされました?」

背後から声がした。
振り向くと赤いチャイナドレスに身を包んだ女性が仁王立ちしていた。
歳は…20代後半くらいだろうか。
ボンッキュッボンッとメリハリのある抜群のプロポーションが羨ましい。

「あ…オーナー。」

バニーガールが困惑した表情でチャイナドレスの女性を見た。
なるほど、この女性が支配人なわけだ。

「お客様、うちのサイコロを調べていらっしゃったようですが?」

う…まずいな、見られてた。
客を装って、イカサマを調査しに来た事がバレてしまう。

「このゲーム全然当たらへんやん!イカサマしてるんとちゃうか!?」

わ、茜のバカ!

茜の言葉を受け、支配人は胸の下で腕を組んで聞き捨てならないとでも言いた気に、片方の眉を吊り上げた。

「お客様、ゲームに勝てないからと言っていちゃもんを付けられては困ります。
 何を根拠にそう仰るのですか?」

証拠を掴まない限り、このままではこちらが不利だ。それどころかこちらが悪者にされてしまう。

「イカサむぐぅ!」

「ストップ!」

支配人に掴みかかるつもりだったのだろう。
私は、ズカズカと支配人に近づいて行く茜の口を後ろから押さえ込み、黙らせる。
これ以上彼女に好き放題やらせるとますます状況は悪化する。
店の奥から怖いおじさん達が出てくるかもしれない。

「すみません、私の友人が…。
 ちょっと酔っちゃってるみたいで…すぐ出て行きます、あはは…」

「ほっほんへ!ふごふごんふ~!」

と何かを言いながら、ビシッと支配人を指をさしたままの茜をそのまま店の外まで引っ張り出した。

店を出る直前、支配人が笑みを浮かべたのを私は見逃さなかった。





「もう、茜のせいでめちゃくちゃじゃない!」

「だってぇ~」

茜がふてくされたように口を尖らせている。

赤みを帯びた短いショートヘアに青いヘアバンド。…いや、バンダナ?
人の趣味に口を出すつもりはないけど、正直似合っているとは思えない。
地肌が黒い方だから、赤い髪は良く似合ってると思うんだけどね。
上半身には毛皮を使ったコートを羽織い、下半身はデニムのハーフパンツにロングブーツといういでたちだ。

地べたであぐらをかき、ぷぅと頬を膨らませている茜。
今回の任務で、彼女に同行してもらったのは間違いだったのかも知れない。
「上」の人選ミスかなぁ。
可愛らしい顔に似合わず、乱暴と言うか、気が短いと言うか…。

「もういいわ。私が直接調べて来るから。」

「せやたらウチが行くわ。ウチのせいでこんなんなってしもてんから。」

「いいわよ。アンタじゃ不安だもの。私が行くわ。
 衣装と箱と…準備お願い。あと会社にも経過を報告しといて。」

「え~…」

「え~じゃない。これも仕事なんだから、文句は言わない。
 それに茜じゃ正体バレちゃいそうで怖いもん。」

「…はぁ~い。」

肩をがっくりと落とし、茜はしぶしぶ返事をした。
よしよし。それじゃあ準備に取り掛かりますか。





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