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さいきっく事件簿 ACT.5-1

― 1 ―桜井 正太郎。19歳。彼もまた、特殊な能力の持ち主だが例の会社には属していない。もちろん「あの会社」の者がしょっちゅうコンタクトを取って来るのだが、その都度断り、半ば強引とも言えるその勧誘をやり過ごしていた。組織なんて言う窮屈な場に身を寄せるよりも好き勝手に、自由奔放に生きていたい。それに、お金の面でもあの会社よりも美味しい仕事がある。街の喧騒が遠く聞こえる入り組んだ路地裏。時刻はまもなく...

夢追い人 4

― 4 ―ゴツゴツした手とは対照的な柔らかい感触。その時少女の身体が石でなかったら、彼女は泣いていたかも知れない。灰色に濁った彼女の眼は、ずっと老人の方を向いている。いつもにも増して熱心に石を打ち続ける彼の姿を疑問に思う。なぜ今日の彼はこんなにも頑張るのだろうか。疲労も相当なものなのだろう。ランタンの光に照らされている顔が青白く見える。いや、室内が薄暗い為にいつもと違うように見えるだけなのかも知れな...

旧バレンタインネタ

「へえ、これはなかなか」グレンは目の前に立つチョコレートを眺め、感嘆の声を上げた。2月14日。若くして貿易会社の社長となり、世界でも5本の指に入るほどの大富豪となったグレンの屋敷には、いつも数え切れない程のチョコレートが届く。無論、チョコレートだけではない。アクセサリーや宝石。手編みのマフラーもあったか。容姿端麗の大富豪の下には日々、下心を持つ女性達からプレゼントが贈られてくる。年に2回。特に集中...

夢追い人 3

― 3 ――私って、変なのかな。友人達を見ていると、やはり恋人には歳が同じか近い者を選んでいる事が分かる。中には10近くも歳が離れているカップルはいるが、この少女のように60歳近くの差がある人間に好意を持つのは極めて異例だった。その為か、友人達には何となく話し辛かったし、好きな人がいるのかと言う質問にもノーと答えていた。彼女が相当年上の男性を好いている事よりも、あの小屋でひっそりと生活を営む老人の事を噂...