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夢追い人 2

― 2 ―たった今、石への変化を遂げた少女をじっと見据える。何故この娘は、こんなにも自分に協力してくれるのだろう。老人は以前から不思議に思っていたが、特に問いただす事もなく、彼女の厚意を受け入れていた。考えても仕方が無い事に時間を費やすよりも、やらねばならない事がある。老人は、早速彼女をモデルにした彫刻の制作を再開する。人間には生命がある。石には生命が無い。しかし今、目の前に立っている石像には生命が...

夢追い人 1

― 1 ――カーン。カーン。町外れの丘の上。心地よい風を全身に浴びながら、少女は音のする方へ歩み寄る。そこはそびえ立つ大樹の下、風景に溶け込むように建てられた古い小屋。少女はこの音が大好きだった。只の岩石の形が変わって行く音。只の岩石に生命が吹き込まれる音。そして「彼」の活動を教えてくれる音。逸る気持ちを抑えきれず、小屋を目指して駆けて行く。木製のドアをノックし、中に入ってから挨拶をする。その時の彼...

さいきっく事件簿 ACT.4(後編)

アニメのDVDやアダルトゲームソフト、フィギュア、ぬいぐるみ、ポスター、果てにはセル画等の売買を行っているオタク御用達の店がある。雑居ビルの1階にテナントとして入っている個人経営の店。決して広くは無い店内で、客達は背負ったリュックサックが棚に引っ掛からないよう、用心しながら商品を物色している。「すいませーん、これ売りたいんですけど。」買取希望の客が入って来た。レジカウンターの上に置かれたもの。それ...

さいきっく事件簿 ACT.4(前編)

― 1 ―ゲームショップ『ゆ~ゆ。』商店街の一角に構えられたこの店は以下の3人によって運営されている。 ・伊藤 惣一(オーナー/店長) ・大平 奈々菜(アルバイト店員) ・青野 一成(アルバイト店員)大平奈々菜はこの店でアルバイトを始めて3年は経つ。オーナーの伊藤の不在時には、彼女が店長代理として店を切り盛りしている。上記3人でローテーションを組み、繁忙期を除くと店には2人しかいない事が多い。本日の...

生きたかった石像

例えそれがかつて神を崇めるような神聖な場所であったとしても、廃墟になって相当の年月が経てば、ただのダンジョンと化す。そしてそこはモンスター達にとって格好の住みかとなる。モンスター達が多く住みついたダンジョンは、一般の人間達には恐怖の対象となるが、命知らずな冒険者達はこぞってそこへ進入して行く。ある者は様々なモンスターとの戦闘経験を積みたいが為。ある者は遺跡内に残されたお宝捜索の為。ある者は最深部に...

アルの不思議な宝箱

― 1 ―アルベルトは海辺で子ども達にいじめられている亀を助けた。亀は言った。「助けて頂いたお礼に竜宮城へとお連れしましょう。ぜひとも乙姫様にお会い下さい。」「うおっ、亀が喋った!モンスターか!?」アルベルトは背中から大剣を抜き、構えるが、亀に敵意が無い事を理解すると、おとなしくその言葉に従う事にした。甲羅に乗って亀が向かった場所。そこは海の聖域。平和な魚達の楽園…であるハズだった。アルベルトと亀が...

さいきっく事件簿 ACT.3

― 1 ―「以上が今回の依頼内容だ。」「わかりました。ちょっと恥ずかしいですが…お仕事ですもんね。」「君の能力が必要なんだ。期待させてもらうよ。」「はい!」シルキィはにっこりと微笑んで上司に返事をした。「ふぅ。明日から3日間…固まってないといけないのかぁ…」長く伸ばされたブロンドの髪をまとめ、シャワーを喉元に当てながら、シルキィは溜息をついた。彼女の身体はもう充分に成熟していながらも、若者独特の肌の張...

さいきっく事件簿 ACT.2

― 1 ―万が一の為に着込んだ服が役に立った。それが不幸中の幸い。しかし、不幸の比重が大きい事に変わりは無い。特定人物の追跡任務を引き受けた和泉は今、幼い女の子の手の内にいた。自身の身体を小さく出来る能力は、追跡や侵入活動に持ってこいなのだが、和泉にはその性格柄、向いていない仕事なのかもしれない。追跡すべきターゲットのみに注意力が注がれ、周囲への気配りが出来てなかったのだ。「あ!お人形さんが落ちてる...

さいきっく事件簿 ACT.1

世の中には、現代科学では説明できない現象を引き起こす能力を持った人間がいる。手から火を出す、触れた相手を痺れさせる、体のサイズを変えられる、何にでも変身出来る、空を飛べる・・・僅かではあるが、そんな能力を持つ人間が存在していた。もちろんその能力は公にはされていないものの、彼等のほとんどは、とある企業と契約させられる事になる。そこでは超能力者と総称される特別な力を持った人間たちは、「普通の人間」に紛...