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走れアイン(2)

「金2,000!?」「何だ、不満かい?」店主の弾き出した予想外の額に、アインは自分が夢を見ているのではないかと思ったが、そうではないらしい。頬が痛い。「とっ、とんでもない!」ぶるんぶるんと首を左右に振った後、アインは店主の手を握り締め、目を輝かせた。”その気”の無い店主は一瞬臆したような表情を見せたが、すぐに元の冷静な顔を取り戻し、アインの手に包まれた自分の手を引っこ抜いた。「ちょっと待っててくれ。金庫...

走れアイン(1)

「アイン様、どうですか?似合いますか?」フレイヤは入手したばかりのローブを身に付け、嬉しそうにくるりと回って見せた。風と空気の抵抗で、深くスリットの入った下半身部―スカート部分がふわっと浮き上がり、彼女の白く柔らかい太股を下着が見えるギリギリのところまで目の前の男に晒していた。「ああ。女魔導士用のローブってどうしてこう―」「はい?」「いや、そんなに露出が多くて防具として成り立つのか?」「はい!凄いで...

夢追い人 4

― 4 ―ゴツゴツした手とは対照的な柔らかい感触。その時少女の身体が石でなかったら、彼女は泣いていたかも知れない。灰色に濁った彼女の眼は、ずっと老人の方を向いている。いつもにも増して熱心に石を打ち続ける彼の姿を疑問に思う。なぜ今日の彼はこんなにも頑張るのだろうか。疲労も相当なものなのだろう。ランタンの光に照らされている顔が青白く見える。いや、室内が薄暗い為にいつもと違うように見えるだけなのかも知れな...

旧バレンタインネタ

「へえ、これはなかなか」グレンは目の前に立つチョコレートを眺め、感嘆の声を上げた。2月14日。若くして貿易会社の社長となり、世界でも5本の指に入るほどの大富豪となったグレンの屋敷には、いつも数え切れない程のチョコレートが届く。無論、チョコレートだけではない。アクセサリーや宝石。手編みのマフラーもあったか。容姿端麗の大富豪の下には日々、下心を持つ女性達からプレゼントが贈られてくる。年に2回。特に集中...

夢追い人 3

― 3 ――私って、変なのかな。友人達を見ていると、やはり恋人には歳が同じか近い者を選んでいる事が分かる。中には10近くも歳が離れているカップルはいるが、この少女のように60歳近くの差がある人間に好意を持つのは極めて異例だった。その為か、友人達には何となく話し辛かったし、好きな人がいるのかと言う質問にもノーと答えていた。彼女が相当年上の男性を好いている事よりも、あの小屋でひっそりと生活を営む老人の事を噂...